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小話


 環境問題などを話していると、エコロジストの口からよく「狩りの本能」という言葉が出てくる。
 動物は自分の必要な分しか獲物を狩らない、というアレだ。
 過剰な富まで求める人間の愚かさと対比させて作られた言葉だろうが……これは本当なのだろうか?
 という話を確かめた実験がある。
 ネコの入ったガラスケースの中に、ネズミを入れる。
 するとネコは反応し、ネズミを視界に捉え、身構える。そしてネズミが走り回り、側を通ったところで飛びかかり、首筋に噛みついて殺し、それからネズミを食べる。
 ネコが食べ終わったところで、もう一度ネズミを入れてみる。するとまた反応し、視界に捉え、身構え、飛び掛って殺し、そして食べる。
 これを繰り返すと……ネコは満腹になる。満腹になったところで食べかけのネズミを放置し、食べるのを止める。
 が、この状態でネズミを入れると、ネコは身構える。ネズミを目で追い、側を通ったら飛びかかり、噛み付いて殺しまでする。
 しかし、もう食べない。
 この状態でネズミを投入し続けると、ネコは殺し続ける。が、やがて飽きたのか、殺すのを止めてしまう。
 だが、構えるのも、視線で追うのも止めない。








 それは『目で追う』『身構える』『飛びかかって殺す』『食べる』というそれぞれのプロセスが独立しているという点である。
 つまりエコロジストが声高に叫ぶ『食べるために獲物を追い、殺す』という方法論は、ネコにはない。

 『目で追うために追う』
 『身構えるために身構える』
 『殺すために殺す』
 『食べるために食べる』

 ということが言えるのである。
 確かに狩りの本能というものはあるが、そこには人間が想像するような高尚なものはなく、それぞれの欲求を満たす本能が存在するだけなのだ。
 これがためにしばしば、「羊が島中の草を食い尽くし、食料を失って自ら全滅する」という、生態系を無視したことが起こり得る。
 人間の行動は愚かな点も多いが、自然の法則や自浄作用も、実はそれほど立派なものではない。
by udongein | 2004-03-20 16:19 | 雑学


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