残業帰りに…あの子と少しだけ、話をしたんです。
駅へ向かう道を、「じゃあ、私はこっちなんで」と言って分かれるまでの少しの間、色々な話をしました。会話の内容は覚えていませんが、あの子がよく笑っていたのは覚えています。
会話の余韻に浸りながら、一人でゆっくり歩いていると、少しして後ろから呼び止められました。
先ほど分かれたはずの、あの子です。どうやら走ってきたようです。色白の頬が、微かに上気しています。
「足速いから…追いつけないかと思った」
あの子はそう言いながらはにかむように微笑み、私に用件を言いました。仕事の話で「明日、休日出勤で上司が来たら、テスト用のドライバが完成してるか聞いてほしい」と。「上司にそう言えば通じるから」と言われました。
そして、「携帯のメールアドレスを交換しよう」と。「ごめんね、迷惑かけて。今度ご飯おごるから」と言われたのです。
「迷惑ではないですよ。でも、食事は喜んで」
そんな風に言って別れながら、胸の中で呟きました。ああ、恋愛ってのはたぶん、こういう小さなことから始まるんだ、と。
そんな翌日、休日出勤。
「○○さん、シミュレーションのテスト用ドライバできてます?」と聞いた私を鼻息荒く睨み付け「
ああ? 何言ってるか意味わかんねーよ」と憤る35歳のデブ上司(オタク)
「そう言えばわかる、と言われましたが」「誰に?」「××さんに」
と私が言い終えた瞬間、
彼女の携帯に電話をかけるデブ上司(オタク)
土曜日の、朝9時に。
何が彼をそこまで憤らせるのか。タイフーンと蝶の羽ばたきの関係は。赤ちゃんはコウノトリが運んでくると信じていた私の立場は。
そして、しみじみと思いました。
ああ、恋愛ってのはたぶん、こういう小さなことで壊れていくんだって……
…結果? 聞くな(吐血