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チキン(村上真裕)


 ヤングマガジンで掲載されていた、ボクシング漫画。1巻ですが、今後続刊が出ることは絶対にないでしょう。
 それくらい、設定に矛盾がムチャクチャです。
 主人公はかつてモーラー(暴れ屋)とまで呼ばれていたKOボクサー。その試合の凄惨さは凄く、ついには試合でレフェリーストップを振り切ってまで相手を殴り続け、植物状態にしてしまいました。
 その事件で主人公は懲役一年の実刑を受けます。
 そして、服役を終えて帰ってきた主人公はボクシングにカムバックしたのですが……それからの彼は、試合中に相手の攻撃を避け続けて判定勝ちで逃げ切るというゼロ・KOファイターになってしまうのです。




 この時点でかなりムチャクチャな設定なのが予想できると思いますが、更にその試合風景が凄いです。
 まず、相手の攻撃を一発も当たることなく避け続ける主人公。コーナーに追い詰められてもパーリングと上半身を動かすだけで全弾避けきるという徹底ぶりです。
 そして、主人公の攻撃は……ラッシュもアッパーもなく、ただペシッという音のなるパンチを単発で当てるというチキンスタイル。
 それでもボクシングの試合は「引き分け禁止」というのがあり、全く攻撃の当たらない相手よりも、蚊の刺すようなパンチを当てる主人公の方が常にポイント優位になります。
 そうやって主人公は世界チャンピオンになり、もう8回防衛しているという設定です。
 …まー、そういうトンデモボクシング漫画です。
 打ち切りを食らったのはこの設定では続きが書けないからというのが理由ではないでしょうか。
 他にも練習中、前触れもなく襲ってくる網膜剥離や、主人公があと12年チャンピオンでいるつもりであるなど、ボクシング知ってんのか?と尋ねずにはいられない展開です。
 さらに友人が「これは読めない」と言ってのけた絵の汚さ、稚拙さも目につきます。
 古本屋でこの表紙見ても、手にとる人少ないんじゃないかなぁ、と思います。


 さて、ここまでケチョンケチョンに貶した後で言うのですが……

 それでも物凄く面白いんですよ。

 主人公が観客全員から罵倒される時の回想の場面、服役中の場面、刑期を終えてから植物状態にしてしまった相手の奥さんに挨拶をしに行く場面。
 そして、試合の場面。
 設定がムチャクチャだと呆れながら読んでいたのに、話が進むたびに夢中になってしまうストーリーの面白さがあります。目に付く部分が多いのに、それが全く気にならなくなるほどのストーリー。これは中々見れるものじゃないです。
 はっきり言って、かなり感動しました。7、8回は読み返してます。
 この「いい部分」はここで語ってしまうと衝撃が薄れる場合があるので、語りません。
 中古屋ではかなりの確率でストックがあるので、立ち読みしてみてください。気に入ったら買いましょう。


 余談ですが、アレからさっぱり漫画書いてないなあの人……と思ってたら、今年になってパチスロ漫画描いてました。
 買おうかどうかは悩み中です。
by udongein | 2004-10-24 23:03 | レビュー


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